創業寛延三年    護身具の老舗 煮庫裏屋

創業寛延年間 護身具の老舗

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ごあいさつ
 護身具を一筋に、二百五十年。
 煮庫裏屋本店ホームページへのご来訪、誠に有難う御座います。

 煮庫裏屋の創業の礎は、徳川第八代将軍吉宗の時代にまで遡ります。その当時、江戸の浅草界隈に「お玉と清吉」というたいそう仲のよい姉弟が住んでおりました。姉は男ならば見返らざるを得ないほど美しく、弟の方は少女と見間違うような美少年であったそうです。早くに両親を亡くしたこの二人はしかし、貧しい長屋住まいながらも仲睦まじく助け合って暮らしておりましたので、江戸の人々は彼等のことを「浅草の姉弟小町」と呼んで親しんでいたと伝えられています。

 しかし何時の世も、可憐に咲いた幸せの花は踏み躙られやすいものなのでしょうか。江戸へ物見遊山の旅にやってきた京の大店の娘が、金物屋で働いていた弟の清吉を見初めてしまったのです。この女はしきりに文を送りつけたり人を遣わせたりして、姉弟の慎ましい生活を狂わせます。お玉はひと目でこの女の性根の卑しさを見抜き、絶対に応じぬようにと弟に念を押しました。弟も姉の言いつけをよく守って、身を慎んで暮らしておりましたが、色も財もある京女の誘惑にやがて迷いが生じ、最後には虜になってしまいます。姉は泣き叫びながら弟を引きとめようとしますが、彼はそれを足蹴にして京へと上り、女と祝言をあげて夫婦の契りを交わしてしまったのです。

 お玉は弟に追い縋ろうとしましたが、叶いませんでした。当時は「入り鉄砲に出女」と謳われているように、江戸から出ようとする女性の通行は厳しく制限されていたのです。金もなく、何の身の上の保証もない女には、そう簡単に通行手形は発行されません。姉は弟を追いかけたくても追いかけられず、さりとて弟のことも諦められず、終日頭を掻き毟っては荒れ狂う有様でした。清吉の雇い主であった金物屋の店主は、彼女がこのまま遊女にでも身を落としてしまってはあまりにも哀れだと見て、自分の店で働かせてやろうと考えます。

 こうして姉は毎日毎日、半身もろ肌脱ぎになって包丁を研ぐようになりました。昼も夜も寝食を忘れて、長く美しい髪の毛を振り乱し、ただひたすらに包丁を研ぎ続けます。当時夜の浅草の通りでは、「ゆるすまじ、ゆるすまじ」というお玉の呟き声と、その砥石の音だけが響き渡っていたそうです。そんな彼女の努力が実ったのか、お玉の研いだ包丁は「非常に塩梅がいい」と江戸中で評判になり、金物屋も大繁盛となりました。店主はお玉の功績を称えて、彼女のために通行手形を用意してやります。しかしすぐにでも京都へ飛んでいこうとするお玉を、彼は押し留めました。……いくらなんでも風呂敷包み一杯の包丁を抱えていけば、箱根の関で止められてしまうからです。お玉は何故か、包丁を引っ掴んで弟に会いに行こうとしています。そんな彼女を訝しんだ店主は、通行手形を渡すのと引き換えに、荷物の全てを江戸に置いていくよう約束させました。お玉は手ぶらで箱根の関を抜け、遂には京へと辿り着きます。

 彼女はその日のうちに、弟の住まう邸宅に忍び込みました。縁の下に潜り込んでひたすら夜を待ったのです。やがて日は落ち、若旦那となった清吉が帰ってきました。頭上から聞こえてくるのは、嗚呼、懐かしくも愛しい弟の声。嬉しさに涙が零れ落ちそうになる彼女の耳に、しかしその次に聞こえてきたのは、そんな彼の声で囁かれる卑しい泥棒猫の名前でした。

 お玉は顔を真ッ赤にして、畳を突き破ります。驚きおののく弟と泥棒猫をよそに、姉は自らの腹をその手でもって引き裂きました。――まだ真新しい傷口を開くと、そこから出てくるのは無数の包丁。お玉は江戸を出る際に自らの腹を切って、その中に包丁を隠してきたのです。一本、また一本と、怨念の篭もった刃物を己の腹から取り出しては、泥棒猫の身体へ突き立てていきます。数えること二十四本目の包丁を突き刺した時、遂に悪女は滅んだのでした。そして悲願を成就したお玉も、愛しい弟に見守られながら息を引き取ったのです。

 この一件は全国に響き渡り、姉弟が働いていた金物屋も耳にするところとなります。金物屋で働いていた一人の丁稚も、お玉の壮絶な最期を聞き及んで、「かような悲劇を二度と繰り返すまじ」と強く心に念じるようになりました。後年、丁稚は江戸を出て、名水音取川の畔に護身具の店を構えます。

 時は寛延三年、この丁稚こそが煮庫裏屋創業者、初代「煮庫裏屋三左衛門」です。以来二百五十年の間、歴史の荒波に揉まれながらも、私どもは煮庫裏屋の暖簾と創業者の理念を守り続けて参りました。

“泥棒猫は許すな、悪女は近づけるな、弟は渡すな”

 煮庫裏屋一同は、今も変わらぬこの伝統の想いを、二十一世紀の世に伝えていきたいと心より願っております。弟を溺愛する全国のお姉ちゃんも、幼馴染を誰にも渡したくない女子高生の方も、不釣合いな女と結婚した彼を取り戻したいOLの方も、どうぞお気軽に煮庫裏屋護身具をご利用下さい。


煮庫裏屋代十九代 煮庫裏屋疾人




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このページは2007年エイプリルフールネタのリバイバルです。
真に受けたりしないでください。